シュトラックデンチャーとは、どんな入れ歯?

シュトラックデンチャーとは、どんな入れ歯?

今回は当院で採用しているシュトラックデンチャー(ドイツ式総入れ歯)についてお話しさせていただきます。

シュトラックデンチャーから派生したBPSデンチャー

シュトラックデンチャーとは、その名の通りドクター・シュトラックによって、開発された総入れ歯です。

当院ではドイツ式総入れ歯と読んでいます。

シュトラック先生は稲葉繁先生が留学したドイツのチュービンゲン大学歯学部の教授で、シュトラックデンチャーは日本でも話題のBPSデンチャーの原型です。

BPSデンチャーはリヒテンシュタインのイボクラール社の入れ歯システムで、私も何度もセミナーに出席し、その方法を習得してきました。

特に近藤弘先生のセミナーはGC社でも、白水セミナーでも受講し、とても思い出深いシステムです。いわゆる吸着義歯(吸着する入れ歯)の代表格です。

こちらはBPSデンチャーのテキストです。

BPSデンチャーのテキスト

BPSデンチャーのテキスト2

シュトラックデンチャーを進化させた“上下顎同時印象法”

BPSデンチャーとは異なる形でシュトラックデンチャーを進化させたのが稲葉繁先生です。

稲葉繁先生はシュトラックデンチャーを習得し、ご自分でお考えになった“上下顎同時印象法”を開発されました。

これは総入れ歯に求められるすべての条件をクリアした、まさに究極の総入れ歯と呼べるものです。 ※ちなみにBPSデンチャーは上下顎同時印象法を採っていません。

シュトラックデンチャーは総入れ歯に求められるすべての条件をクリアしていると言いましたが、その条件とはなんでしょう。

・口を開けた時に下の入れ歯が浮き上がらない。
・食事中に上の入れ歯が落ちてこない。
・食事中に上下の入れ歯が動かないので、食べかすが入れ歯と歯茎の間に入らない。
・なんでも食べられ、トウモロコシもかじることができる。

などではないでしょうか。

総入れ歯の経験のある歯科医師や患者の方ならお分かりだと思いますが、これらは今までの常識では考えられないことです。しかし、上下顎同時印象法を用いたシュトラックデンチャーでは可能になります。

この写真は稲葉繁教授がドイツで求めた文献の中のシュトラック先生の描いた図です。日本に存在するのはこの1枚だけだと思われます。

シュトラックデンチャーの図

この図の中には、総入れ歯に必要な条件がすべて揃っています。

入れ歯の外形、粘膜の形態、筋肉の位置と形態、人工歯の位置、舌の位置、床の内側の形などこの通りにすれば入れ歯はびくとも動きません。この図を見てすべてを理解した稲葉教授の素晴らしさは、私たちに福音をもたらしてくれました。

ただこの究極の総入れ歯(上下顎同時印象法のシュトラックデンチャー)を作るためには条件があります。

・フェイスボウトランスファーを行う
・上下顎同時印象をする
・ゴシックアーチを描記する
・カボのプロター咬合器を用いて人工歯配列する
・人工歯はオーソシットを使う
・そして最後にイボカップシステムで完成させる

このように、要求されるレベルが普通ではありません。コストもかかることは当たり前ですが、すべての工程を完璧にこなすには相当な熟練が必要です。

ただし、この方法で治療ができると若い方から年配の方まで入れ歯で悩まずに済みます。インプラントが無理な方、怖い方にはとてもいい治療法だと思います。

当院では上下顎同時印象法によるシュトラックデンチャーを提供しておりますので、ご参考となれば幸いです。

筆者プロフィール

著者

ゆうあい歯科医院
井出 隆一郎

■経歴
  • 1988年 東北大学歯学部卒
  • 2001年 ゆうあい歯科医院 開院
■所属・資格
  • IPSG包括歯科医療学会 会員
  • 日本顎咬合学会噛み合わせ認定医
■患者さまへのメッセージ

当院は長野県木曽郡木曽町にある歯科医院です。IPSG包括歯科医療研究会に所属をしており、一般的な歯科領域のみだけでなく、“顎関節症”、“テレスコープシステム”、 “総義歯”、“摂食嚥下”を4本の柱とした包括歯科治療を行う事目指しています。

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